今回は日本語教師を目指している人のやる気に水を差すような、非常に無神経な内容ではないかと思います。
私だって頑張っている誰かの夢を壊すようなことはしたくないし、そんな権利もありません。
「頑張っているんだからそっとしておいたらいいじゃない。」と言われれば、まさにおっしゃるとおりで、ぐうの音もでません。
つまり、お節介おばさんもびっくりな余計なお世話をしようというのです。

ただ、本気でドリームキラーになりたくてこんなことをしているわけではありません。
もし甘いことばかりを耳にしていて、日本語教師になった後に「こんなの聞いてない!」と日本語教師が嫌になってしまうのであれば先に知っておいてほしいのです。
こんな現状もあるんだよ、と。
それでも「今」日本語教師になるんだ!と燃えているのであれば、そのつもりで準備ができるかもしれません。
余計なお世話ですが、知らなかったが故にすぐに日本語教師が嫌になって離れてしまったり、「今」と言うタイミングのせいですでに仕事も辞めているのに日本語教師にもなれず生活がままならない…と言う事態にも陥ってほしくないのです。

日本語能力試験の合格に沸く雰囲気に水を差すようで…なにもこんなタイミングでなくとも…とも思いますが、新年から動き出そうと考える人が多いタイミングだからこそ「今」なのです。

①コロナ禍における日本語教育界

まもなく2年が経とうとしているコロナ禍の生活。
度重なる緊急事態宣言や蔓延防止措置。正直、そんな生活にも慣れたと感じている人も多いかもしれません。
日本語教育界に大きな影響を及ぼしているのは、中でも政府による水際対策の入国制限です。
一時、緩和されてわずかではあるものの外国人が入国できるようになりました。
その際は、本当にわずかですが何とか来日できた留学生もいたそうです。
(のちに留学生の入国は3人だったというデータを目にしました。何かの間違いであって欲しい数値です)
ただ、多くの学生は来日できないまま国で日本との往来再開を待っています。
変異株の発生、それもまだ実態が掴めないうちは政府が敏感になり、島国である特性を活かした対策を講じようと躍起になるのも否定はできません。
国民には評価されたという話も聞きます。
特に前政権は後手後手だと批判されることが多かったので、先手に回ったように見えて印象がいいと答えた人もいるのでしょう。
外国人と直接接点がないと感じている人には、鎖国状態を維持することがいかに日本全体に悪影響を及ぼすのか、イメージ・実感はできないのでしょう。

A:入国ができないと学生が増えない
単純ですが、鎖国状態が続く限り学生は入国できません。
まず、多くの日本語学校は学校の収入を学費に頼っています。
ハイブリッド授業などを実施している学校が学費の扱いをどうしているのかは学校によるので一概にはいえませんが、さすがに来日して授業を受けるときと全く同額での授業というわけにはいかないのではないでしょうか。(私の周りの学校は無料だったり、かなり安くしていたりする学校ばかりです。)

多くの学生が他の国に舵をきったり、留学そのものを諦めてしまったりしたという話が後を立ちません。
学生がいなくなったら、当たり前ですが先生は必要なくなります。
いつかの往来再開に向けて、授業がなくても先生を抱えていられるような余裕のある学校はほとんどありません。
そうなると、日本語教師は続けられなくなります。
自分の意志とは関係なく辞めるほかないという現状に陥るのです。

B:海外の求人に挑戦しにくい
今でも海外での日本語教師の求人は目にしますが、今は安易に考えない方がいいです。
求人が出ているというのは2種類の意味があると言われています。

1. 本当に人が欲しくて募集を出している
2. 学校の存在をアピールするために広告がわりに出している

まじめに考えている身からしてみたら、人が必要ではない時に求人を出すなんて……ひっかけみたいなことしないでよ、と思いますが。

そして、現在はさらに気をつけないといけないのが、本当に募集していても各国の水際対策の往来制限によっては日本からの入国が許可されないことがあるということです。
日本が海外からの入国を認めていないことは連日のニュースで印象に強く残っていう人も多いと思いますが、各国の対応は基本的に自分に直接関係がない場合は分かりませんよね。
昨日はよかったことが、日をまたがったらダメになっていた、ということも発生します。
「ラッキー〇〇で募集出てた!採用された!」とことが運んでもそれだけでは安心できないのです。

また、もし、そんな困難を乗り越えて渡航に漕ぎ着けて、実際に向こうに入国できたとしても、隔離のルールや現地での不慣れな生活など、特に最初は大変なことが多いでしょう。
ミスコミュニケーションも発生するかもしれません。そんな時、自分だけで対応できればいいのですが、果たしてどれだけの人が異国の地で、イレギュラーな状況で適切に対応できるでしょうか。
そんな時、どうするのか……コロナ前と違って、簡単に逃げ帰るということもできないのは理解しておく必要があるのです。

余談ですが、私は台湾で仕事をしていた時、着任して3日程度で日本に逃げるように帰国した先生がいました。
人によって「辛い」の基準は違うので、不慣れな環境で自分が思っていた以上に参ってしまうことも想定されます。
そのこと自体は仕方がないことなので「帰国する」という判断と行動が取れるうちに帰国したことは、当時本人にとってはナイス判断だったと思いますが、今の環境ではそれさえも簡単にできないのではないかと思います。

行きたい国の求人が出ていたり、渡航できる可能性が濃厚のように見受けられることはあると思いますが、先に先にしっかりリサーチしておくことをお勧めします。
何事も自己責任になってしまうので…(場合によっては出費だけがかさんで結局無駄になってしまう可能性も……)

C:多くの日本語教師が仕事が欲しい
コロナ前に勤務していた多くの日本語教師は、「待機」を余儀なくされている人が多くいます。
新人だと採用されない、経験者の方が有利、などは一概に言えないので、未経験では就職できないとは言い切れませんが、コロナ以前ほど未経験に優しい環境ではないことは覚悟しておいたほうがいいかもしれません。
私の身近な範囲というごく限られた環境では、学生の入国が始まったら「経験者の先生(以前勤務してくれていた先生)に戻ってきてもらう」と話している学校ばかりです。

日本語学校という環境は新人教育があまり上手じゃないところが多い印象です。
つまり、入国者とオンライン授業のハイブリッド授業をすることを想定すると、単に授業運営をしたらいいのではなく、遅れてきた学生の対応やオンラインの学生への配慮など、対応することが多くなるため授業であたふたするのは避けたいと考えているそうです。
また、新人の先生の実際の授業を見たことがないため、期待をして入国した学生にグダグダの授業をするのは避けたいという考えもあるそうです。
(新人であれ、いい授業をする人はいるだろうと思うので、これは学校側が損することになるかもしれませんが)
単純に賭けはできないと思っているのでしょう。

以前、東日本大震災の直後にも未経験者には非常に不利な就職環境になったことがありました。
どうやら、この業界は分かりやすく未経験が不利になるタイミングがあるということでしょうか。

もちろん、いくらたいそうな経験があっても、この状況下でパソコンを使った授業はできない!というのは全く使い物になりません。
そういう意味では、経験よりも何よりもパソコンの基本的な処理能力は前提条件になってきているように感じます。

②休講などの補償面(お金の話)

A:専任教員の場合
会社に所属しているのと基本的には同じなので、給料が出ているようです。
満額なのかどうかは学校によります。
求人情報の記載だけを見て安心するのではなく、直接確認したほうがいいでしょう。
入社前にお金の話をするのは気が引ける人もいると思いますが、「後で」では遅いです。
基本的には生活するためにお金を稼ぐ必要があって仕事をしている人がほとんどでしょうから、そこは綺麗事では済まされません。

給料、ボーナス、各種補償など、専任講師は記載のある受けられるはずのものはコロナ禍でもきちんとしているのか確認しましょう。

B:非常勤講師の場合
非常勤講師は基本的に授業を実施したら給料が入ります。
つまり、授業が減れば、給料も減ります。
突発的に中止された授業の扱いは学校によって異なりますが、経験上は支払われないことが多かったです。
「予定していれば支給される」と勝手に思い込んではいけません。

各種保険なども適応されない場合が多いです。
その場合は当然「国民年金」「国民健康保険」を利用することになります。(ご家族の扶養などは各自での確認が必要です)

私は国民年金、国民健康保険ですが、普通に請求が来ます。(当たり前ですが…)
ついでに暴露すると、コロナ以前に勤務していた日本語学校では現在一切授業がないので、コロナ禍になって以降は収入はゼロです。
文字通りゼロです。
今ある収入は、掛け持ちしている学校(専門学校)と登録している企業のレッスン報酬です。
ただ、それでも12月の給料は約6万円です。
生活水準は各個人で違うというものの、この金額で生活ができるという人はそういないのではないでしょうか。
私は学生のときのアルバイトの方が稼いでいたな……と過去を振り返ります。

専門学校の時間割りは年間で決まっているので、私の努力では変わりません。
登録企業も基本的にはクライアントの気持ち次第の受け身なので、どうしようもありません。
オンラインレッスンのプラットフォームにも登録はしていますが、閑古鳥…いや、もはや鳥さえ鳴いていません。
一応、試行錯誤は重ねているつもりですが、結果につながらずゼロです。

はっきりいうと、以前のように「非常勤日本語教師掛け持ち」では生活できるだけの給料を稼ぎ出すのは難しいフェーズに入ったという感じです。
先に述べたように学生がいないのでは…ここは個人の努力で簡単に変えられることではありません。

そういえば、悪天候による休校も給料支給の有無は確認しておいたほうがいいですよ。
一般企業の「当たり前」が、そのまま日本語学校での当たり前になっているとは限りません。
基本的に、今までの普通を全て取っ払うくらい丁寧に確認を重ねることをお勧めします。

③オンライン界隈の需要

コロナ禍で大きくなったオンライン日本語教師の需要。そして、そのつもりでの求人。
個人で登録するタイプのプラットフォームも目につくようになりました。

オンラインのレッスン求人でも気をつけたほうがいいことがたくさんあります。

A:給料
安すぎやしませんか?
「資格を取ったばかりだから」「まだ新人だから」など、自己評価を低くしすぎていることはありませんか?
私は1時間800円程度の求人を見たことがありますが、冷静に考えてください。
一般的なアルバイトでもこの給料は安すぎます。(首都圏基準で申し上げています)
ましてや日本語教師になるために、あなたは資格を取ったんですよね?専門職ですよね?
資格を取るために時間も、お金も、そのほかにもいろいろ投資して、今ここにいるわけです。

必要以上に自己評価を下げて、遠慮して「この求人でも最初は仕方ないか」と妥協する必要はありません。
もちろん、扶養の関係で給料をあえて下げたい人がいたり、給料そっちのけで経験を積みたい人もいるでしょうから、その求人を受けてはいけないとは言いませんが、納得できない場合はよく考えて応募してください。

また、日本語教育界の給料は業界として低水準であるといえます。
いろいろな原因が考えられますが、「安い給料で仕事をする人が一定数いるから」というのも理由の一つだと思います。
安請け合いせずに、自分の時給を正当に請求したら「安いと誰も仕事をしてくれない」という状況になるので、依頼者も給料を上げるしかなくなるのではないでしょうか。

自分で設定する場合は、一般的な時給水準や他の先生の値段設定も参考にしてみるといいと思います。

B:学生がつかない
これは、個人で登録するタイプのプラットホームでよくありますが、先生の登録が増え続けていて、思うように学生が獲得できないことがあります。
オンラインはすでに多くの人が参戦しているので、個人で飛び込んで簡単に学生が獲得できる環境ではなくなってきています。
アピールできるポイントがある、他の先生とは違う、運が非常にいい、マーケティング能力に長けていて存分に発揮できる、など差別化を図って上手に学生獲得に繋げられる人は大丈夫かもしれません。
そうでない人は「その他大勢」に埋もれてしまう可能性があります。(私もそうなので、その点は偉そうに語っている場合ではないのですが…)
有名なitalkiは、それこそ資格がなくても登録ができるくらい入り口は大きいですが、生徒を獲得できないからといって運営側が生徒を紹介してくれるなどのサポートはありません。
受け身、待ち、というタイプの人は難しさを感じるかもしれません。

オンラインは学生を斡旋?してくれるところもあります。
自分で学生を獲得するのが難しい人は、最初から紹介してくれるタイプの会社に登録したほうが学生を獲得できる可能性が上がります。
もし外国語が話せるという人がいたら、存分にアピールしたほうがいいでしょう。
特にマイナー言語だと、それだけで大きなアピールポイントになります。

C:著作権
これは「知らなかった」では済まないので、かなり神経を使います。
対面授業では使えた教材が使用できないこともたくさんありますし、絵や写真をネットから引っ張ってきたらアウトだった……というケースもあります。
音楽を使ったり、漫画を使ったり、エンタメ系は危険要素がいっぱいです。

個人的には「自作」しか無難に使えるものはないのか?!と思うくらいです。
教材をカメラに写して見せるのもダメだそうです。

著作権の細かい規定は個人でしっかり確認してほしいと思いますが、「大丈夫っしょ!」と適当に考えてはいけない要素です。
そういう意味でもオンラインレッスンで使用できる教材は限られてしまうのでその点も考慮しておいたほうがいいでしょう。

D:税金の処理は自分で
確定申告など、税金関係は全て自分で管理することになります。
今まで会社に所属していた人は、ほとんどの処理を会社がしていたでしょうから、「まず何を?」というところから謎でしょう。
それでも自分でしっかりと管理しないといけなくなります。

経理管理ソフトを使用したり、自分でメモしておいたり……本などを購入して勉強する必要も出てくるかもしれません。
私も自分で確定申告をしていますが、毎年あっているのかドキドキします!!
このような不慣れな手間が増えることも覚悟しておきましょう。

最後に

今回はあまり明るい内容ではない話になってしまいました…
でも、日本語教師を辞めたほうがいい、ならないほうがいい!という意味でお伝えしたいのではないのです。
一緒に頑張っていく仲間が増えることは嬉しいこと。
だからこそ、「こんなはずじゃなかった」という人を減らしたい。
特に今は苦しい人が多いので、安易に自分だけはそうならない〜♪と楽観視するのは避けたほうがいいと思います。

余計なお世話ですが、養成講座、身近な人だけの話を聞いて安心するのではなく、たくさんある情報から自分で判断して納得のいく道を選択してほしいと思っています。