Twitterで、「新卒で日本語教師になるか一般企業に就職するかどうするか迷う。」「新卒で日本語教師を始めるとビジネスマナーを学ぶ機会がない。」という話が盛り上がっていました。
何事もメリットもデメリットもありますし、個々で考え方も違います。
「仲のいい友達や親戚などに新卒で日本語教師になる選択をどう思うか」相談されたと仮定して個人的な意見をまとめます。
①就職活動が独特
いい、悪いではありませんが、日本語学校への就職を希望する場合は、一般企業でよくある就職活動とは少し違います。
多くの学生は時期が来たら一斉にリクナビなどの就職活動サイトに登録したり、合同説明会に参加したりして、エントリー・面接などに進んでいきますよね。
日本語学校の場合はリクナビなどに求人を出していることが少ないので、基本的には「日本語教師」の求人サイトで募集している学校を探します。
採用の審査も面接を何回も繰り返すことは少なく、面接・模擬授業で合否が決まることが多いです。
応募するなど、実際に動き出す時期も一般企業よりは遅いことが多く、4月の採用であれば1月くらいから活発化します。
最近は、少し早くから募集していたり、早めに応募して採用の時期を4月にすることで合格を出す場合もあります。
ただ、コロナで入国が止まっているなど、日本語学校の採用に関しては直前で「待機」「採用取り消し」など、学校側の都合で状況が大きく変わってしまうこともあります。
学校側の都合といっても、どうしようもない状況もあるので…なんとも言えないのが現状です。
また、採用取り消しに関しては一般企業でも発生する可能性はあるので、そういう意味では日本語学校だけが理不尽だということではありません。
特に友達とはスケジュールが違うことで焦りが出たり、気持ちが揺らいだりすることがあるでしょう。
大学生だと2月以降は時間割りが空き卒業旅行を楽しむこともあるでしょうが、その時期に就職活動をしないといけないこともあります。
そういうもんです。
②新人教育がきちんとできる学校は少ない
日本語教育界は新卒採用や若い先生の採用はまだ少ない業界です。
その影響もあるのかもしれませんが、一般的な社会人マナーと言われるものの研修が確立している学校ばかりではありません。
「できるものだと思っている」という感じです。
一般的な社会人マナーというのも一体なんだろう?と思うかもしれませんが、ここでは名刺交換、電話のマナー、訪問マナーなど、秘書検定でも出題されるような内容をイメージしていただければと思います。
一般企業に就職したら、その辺りのことがちゃんと研修されるのかといえば、そうでもない会社もあるそうですが…
私は一般企業に就職して新人研修がありました。
友人に聞いても「あった」と答える人ばかりなので、環境にもよるかもしれませんが、最低限は研修があるところが多いのではないかという印象です。
一方で、日本語学校は最初に書いた通り、新卒が少ない業界です。
学校として新人研修がきちんと確立されている学校はそんなに多くない印象です。
実際、私が勤務してきた学校も「皆無」「その場しのぎ」でした。
これが社会人のスタートとなるのは大変かもしれません。
ガツガツ自分から聞いていく積極性も必要ですし、業界としての「見て学べ」ではなく「伝えていく」環境にシフトしていくことは大事です。
ただ、現状では「自分ではいけない」「教えられないと自分で勉強しても難しい」という人が日本語学校に新卒で就職して、満足なビジネスマナーを身につけるというのは難しいと言わざるを得ない環境であると思います。
*一般企業に就職しても「教えられない。見て学べ」スタイルのところはあると聞くので、一般企業だと安心でいるというメッセージではありません。
③業界としては若い先生が欲しい
ICT化が進んでいる現状や、広報活動にSNSを活用したいことなど、事情はさまざまですが授業以外にも日本語教育業界に若い人が入ってきて欲しいと考えている先生はたくさんいます。
残念ながら、「自分の王国大好き♡」「歳は関係ない(だから、若い先生はいらない」という心情の先生もいるでしょう。
そんなの、どの業界もいるので気にしなくていいです。完全に無視しましょう。
「仕事」として日本語教師をやっていく環境を作っていくことは、業界にとって大事なことです。
それには単純に新卒の先生が入ってくるというだけでもすごく大きな価値のあることです。
④雇用形態によって生活が安定しない
正社員と同じ雇用形態で採用されると、大体20万前後が1ヶ月の給料となるでしょう。(地域差はあり)
最初のスタートは大卒一般企業の給料と大きくは変わらないと思います。
ただ、一般企業ほどの昇給は見込めない場合が多いそうです。
日本語教師の平均年収が他の業種より低いことからもあながち的外れな話ではありません。
非常勤となると、掛け持ちなしには生活はできません。
もしくは、実家に住んでいて支出が極端に少ない、他に稼ぎ頭がいるなどの事情がないと、一人暮らしで生活したり、他の友達と同じように生活したりすることは難しいです。
特に非常勤だと、授業がなくなると給料が入らなくなるので、学生の長期休みは一気に給料が減ります。
⑤業務内容と休日のバランス
常勤講師となると、授業・学校行事・進路・生活指導…やることがたくさんあります。
慣れない環境なので、授業を担当しながら授業見学をしたり、模擬授業を重ねたりする学校もあります。
教案を提出して、フィードバックをもらったりも。
そんな感じで平日を過ごすわけですが、最初の頃は授業のストックもないですし、休日に仕事の準備(と称して仕事)をしないといけない場合も多くあります。
本当はそんなことしたくないと思いますよね。
休みの日くらい休ませてくれよ〜と思いますよね。
ごもっともなんですが、「授業ができないと困る」というのも事実なので、やってしまうことになるでしょう。
私はすでに数年日本語教師をしていますが、今でも週末に月曜日の準備をすることもあるので、これからも完全に何もしなくていい週末は来ないかもしれません。
個人の性格でもありますが、月曜日の準備を事前に済ましていたとしても確認くらいはしたほうが安心できるもので。
まとめ
私はSNSなどでこの手の話題を見たときは「いいぞ!」「ぜひ日本語教育界にようこそ〜」と思いますが、知っている人が真面目に相談してきたら、答えに詰まるというのが本音です。
「今やりたい」と思って相談してくれているので、ぜひ今すぐやって〜と思うのですが、苦労することも多いので…
おまけに日本語教師をしていると「ビジネス日本語を教えてほしい」「ビジネス経験がある先生いい」という要求もあります。
そんな時は、他業種の経験がないことはデメリットになります。
いつ何をしてもいい。
自由な選択ができる世の中になりました。
とはいえ、日本語教師から「未経験、40代、営業職」としての転職は大変かもしれませんが、反対に「未経験、40代、日本語教師」への転職は難しくありません。
10年、20年後のことは断言できませんが、それでも日本語教師への転身は何歳からでも可能ですし、やりやすいと思います。
そのため、近しい人からの相談だと、しかも迷っていると言われたら、「一般企業での経験」を優先してもいいような気がしています。