「日本語教師をしています」というと、「じゃあ、英語が上手なんですね」「英語で教えるんですか」のたぐいの話がよくありますよね。
そして、日本語教師を目指している方からは「英語はできたほうがいいのかな…」という心配の声が聞こえてきます。
今回は私なりの答えを書いていきます。

英語ができたほうがいいのか

「できたほうがいい」という質問なら「できたほうがいい」と思います。
ただ、これは、「英語が」という話ではなく「何かできることがある」というのは、日本語教師として働くうえでアピールポイントになる場合があるので、何事もできないよりできたほうがいいのでは?という意味です。

じゃあ、質問者の文字通りの意味で考えると、どうなのか。
英語はできなくても大して問題ありません。
確かに求人によっては「英語/TOEIC〇点以上」のような表記もありますが、英語圏以外の出身の学習者もたくさんいますし、多国籍クラスの場合はむしろ英語を使うことが好まれなかったりするので、自分で希望に合う求人を探せばいいのです。
ちなみに、日本の日本語学校の場合は多国籍クラス、非英語話者が多いので、英語を使うことが求められるということはあまりありません。
授業も基本的には直接法で教えます。
授業内で積極的に英語を使うことはありません。

反対に、英語を使って教えたいと希望する場合は、学校の求人をよく確認したり、学校に授業内の媒介語について確認したりするなどして、最初から英語を使うことを前提としているか、許容している学校を探したほうがいいです。

ほかにも学習者が多い中国語、ベトナム語ができると、授業だけではなく生徒募集で活かせたりするので、英語に限らず語学ができることがマイナスになることはありません。

日本語教師の語学学習は不要なのか

「なんだ、英語使わなくていいんだ。苦手だったからラッキー♪」という人もいますよね。
授業で使わない=勉強さえも必要ない
ということでしょうか。
これは、ただの主観ではありますが、勉強したほうがいいですよ。

私たちは学校教育の中で英語の授業がありましたが、ABCも読めなかったときのこと覚えていますか?
難しくて苦労したな…という気持ちを覚えていますか?
そもそもゼロから外国語を学ぶ大変さに寄り添えていますか???
反対に、できた楽しさを覚えていますか。
遠い過去にそんな気持ちがあったのかもしれないけれど、忘れています。
もしくは日々学生を目の前にすると、「前に教えたのに覚えていない」「何度も同じことを言わないといけない」ということがありますが、基本的に自分たちがそうだった(かもしれない)ということはその瞬間は頭から消えてしまいます。
もしくは覚えているはずだけど、時とタイミングによっては学生に寄り添える心情ではなくなります。
残念ですが、そんなもんです。
教師である前に人間ですからね。
(あと、注意したいのは「指導者だから」と無駄に上に立ったかのような感覚になる人。「私が前に言ったのにわからないのか!」というタイプ、怖いです。教師というだけで、偉くもなんともないです。)

そんな時、語学の勉強をしていると、その一瞬はキーーーーー!!となることがあっても「そもそも、外国語だもんね。難しいよね。私も先生に同じこと何回も言われてるな。わからないことばっかりだな」と外国語の大変さに気が付けます。
これ、学生にうわべだけではなく、実体験として寄り添えるようになるので大事です。
そして、教え方にも影響します。
自分が学習者としての側面があると「この教え方は微妙だったかも」「このイラストは使いやすい」など、授業の組み立てや振り返りの際に、教員ではなく学習者の目線で考えることができます。

もちろん英語である必要はありません。
興味がある言語に挑戦してみてはいかがでしょう?
挑戦できるという人には、ゼロから学ぶ言語をお勧めします。
大人になると、基本的に言葉が全く通じなくて困るという経験は少なくなります。
(海外在住の場合を除いて)
全然通じない恐怖、理解できないもどかしさは実体験があると、学習者の気持ちが理解しやすくなると思います。
もちろんそれだけではないものの、そういう経験はあったほうがいいと思います。

こういう時、旅行のことを思い浮かべる方もいますが、旅行は基本的に楽しさが勝っているのと、生活に影響が出るほどのことは生じないので、旅行の感覚だけで学生に寄り添うのは…難しいと思います。
もちろん、そういう経験がないよりはずっといいと思いますけどね。

お勧めの外国語は?

「好きなの」「興味が持てるもの」がいいと思いますが、あえて「日本語教育の現場」で重宝されそうな、活かせそうな言語と考えると、

中国語
ベトナム語
インドネシア語
韓国語
タガログ語(フィリピン語)
ポルトガル語

あたりでしょうか。
※フィリピンでは英語が話せる学生も多いこと、タガログ語がメインのように紹介されがちですが、出身地域によってはタガログ語が不得意という話を聞きましたので、ざっくり「フィリピン語」と表現させていただきました。

大人向けの日本語学校では、ポルトガル語ルーツは少ないのですが、子供向けで考えると必要度が上がります。
また、バングラディシュ、ネパール、スリランカなど南アジア系の学生は、公用語が多いことで一つの地域言語に絞れないことと、英語ができる学習者が多いので、地域言語をピンポイントで狙うよりは、英語を学習するときに発音の傾向を理解したほうがコミュニケーションがとりやすい側面があります。

日本語学校で活かしたい!という目的であれば、学習者が多い国の言葉を選択するといいでしょう。

まとめ

英語ができないことが、どうのこうのではないですが、何事もできるに越したことはありません。
迷っているのであれば、挑戦してみてはいかがでしょうか☺
私は、サボりつつですが、英語と中国語を頑張っています。
お互い楽しく頑張りましょう☆