最近、日本語教師養成講座420時間の生徒募集の広告をよく目にする気がします。
それ自体が悪いとか、いいとか、そのようなことを論じたいわけではありませんが、少し違和感を感じるところもあり・・・
現在養成講座検討中の方に少しだけ注意しておいてはいかがかと思う点をまとめました!
①学習者の写真・イラスト
細かいことですが、「あなたはこんな環境で教えるんですよ~」みたいな、日本語教師として教えているところを想像させるような写真やイラストがありますよね。
これ自体はよく広告の一部でありますね、と言うだけなのですが・・・
この学習者が、欧米圏を想像させることが多くないですか?
適切な表現ではないかとも思いますが、「イケメン、美人、白人、ビジネスマン」みたいなキーワードで多くの人が「いい人」としてイメージしそうな。
もしくは「かわいい子供たち」みたいな感じの・・・
現実の日本語教育の学習者はどこの国の人が多いのかというと、圧倒的にアジア圏です。
そして、子供よりも大人の学習者が多いです。
もちろん、調査の結果の総数の話なので、ピンポイントで自分が働く場所を選べば、欧米圏の学習者で子供ばかりということもあり得ます。
ただ、多くの人がこのイメージで考えていた場合、理想と現実が異なる場合があります。
現在、日本の日本語学校や専門学校で授業を担当していますが、欧米圏の学生を担当するようになったのは、ビジネスクライアントを担当するようになってからです。(これは学校外です)
学校に来ている学習者は、ほとんどがアジア人の学生です。
さらに言えば、裕福な暮らしをしているわけではなく、アルバイトも必死にやらないと生活が怪しい学生も多々います。
この広告のイメージを鵜呑みにして日本語教師になるのは危険です。
養成講座も広告のイメージを欧米系にする必要がどこにあるのか・・・(いかにも見た目の違う外国人の方が広告には向いているのかしら?と邪推しますが。)
個人的には欧米系にこだわらずに現実に近い広告に変えればいいのに、と思います。
多くの養成講座は、日本語学校も運営していて、実際に授業を行っていることが多いので、それこそその授業の様子を広告に使うのが一番現実的だと思うのですが。
私が日本語教師を目指し始めたころは、正直、欧米に強いあこがれがあって、特にイギリスに心奪われていました。
そのため、「将来は海外(ヨーロッパ)で働きたい!」と思っていました。
広告もそんな感じだったので、単純に信じて「こんなにも日本語学習者がいるのか!」と心躍らせたものですが・・・
残念ながら、日本語教師としてヨーロッパで働いたことはありません。
アジアの求人はよく目にしますが、欧米圏の求人はほとんど目にしません。
つまり、それくらいヨーロッパで日本語教師をするのは狭き門なのですね。
②「オンライン授業で資格取得」と謳う
コロナ禍で学習方法が変わってきている現実から、特にコロナ以降に目にするようになったうたい文句です。
ただ、注意してほしいのは、現時点では日本語教師の資格、「文化庁公認日本語教師養成講座420時間」に関しては、オンライン授業だけでは公認資格として認定されていません。
そのため、高い学費を払って、時間も使ってオンライン講座を受講しても、それだけでは資格取得はできません。
単純に生涯学習として勉強したいだけ、地域のボランティアで話をするだけで資格は必要ない、など、現時点で方向性がはっきりしていて、日本語教師として収入を得る気がなければ、「知識が付いてハッピー!」でいいかもしれませんが、そうでない場合はしっかりと考えてください。
そして、現行の日本語教員資格を確認してください。
現在、日本語教師資格に関しては大きな変更があるかもしれない過渡期を迎えています。
国家資格になるかどうか、その場合の条件はどうなるのか・・・
ちょうど変わってしまうの可能性があります。
資格取得のための学校選びの際は、どんな学校なのかだけでなく、そのときの資格取得条件も自分で確認しましょう!
③セカンドライフにもってこい?!
よく「セカンドキャリアとして」「定年後の仕事に」など、定年まで勤め上げた人に向けての広告がありますよね。
うそではありませんが、真に受けすぎるのも要注意です。
まず、海外での就職を検討する場合、国や学校の種類によってはビザが取りづらいです。
ビザの種類によっては年齢制限があるものも存在します。
もしくは学校オリジナルで年齢制限がある場合もあります。
日本にも定年があるように、海外にも定年はありますので。
何もなくても、自分より若い人と選考される可能性を考えると、年齢がポジティブな経験として取られることもあれば、反対にネガティブな要素だと考えられることもあります。
こればっかりはしかたがありません。
次に、今までの経験が生かせる職場ではあるものの、今の常識と経験したことがマッチしない場合がある点です。
60歳の常識と今の20代の常識が違うように、相手が外国人になってもその違いは生じます。
年齢に関わらずですが、「自分がそうしてきたから」「社会はそうだった」とだけ言われても・・・と言うことも存在します。
頑固タイプの性格の場合はきついかもしれません。
また、たまに「暇な時間を交流の機会にしたくて」みたいなことを言う人がいますが、現場は交流の機会提供ではありません。
その場合は、ボランティアをされたらいいのでは?と思います。
働くということは、自分より年下の教員に指導されます。
自信を持って挑んだ授業でも最初のうちはだめ出しも多くあるでしょう。
「働く仲間」と思って指導するのは必要なことですが、「交流したいだけ」となると・・・
指導する側も暇な時間をもてあましているわけではありません。
たまに主婦の方に同じような方がいますが、年齢・立場を問わず、責任感のない働き方なら日本語教師は辞めておいた方がいいですよ?
実際、授業準備や採点で結構な時間を授業外で使うことになりますから。
④養成講座修了=資格取得・・・?
現実問題、養成講座だけでは難しくなってきました。
養成講座の場合は4年制大学卒業(専門は問わない)がセットで必要です。
大学は行かなかったという人は、日本語教育能力検定試験に合格する必要があります。
これだけ見ると、「日本語教育能力検定試験に合格したらOK?」とも取れますよね。
資格の面ではOKですが、採用側からしたら微妙です。
これは特性の違いだと思いますが、養成講座の場合は実習が含まれているので、「教壇に立って授業をする」という授業があります。
教案を考えて、授業で必要なものを自作したりしてそろえて、自分で一定の時間の授業を回します。
そのため、実戦に近い内容が含まれています。
一方、日本語教育能力検定試験はあくまで知識問題で、授業の練習は一切含まれていません。
この人は、日本語教育の関する知識が十分にありますよ、という一定の証明にはなりますが、人を目の前にして授業として話ができるのかは別問題です。
何を優先するのかについては学校、採用担当者次第ではありますが、養成講座の受講生は四大卒の学歴か、検定合格がないときついのが現状だと考えられます。
身の守り方も考えておきましょう!!!
さいごに
養成講座のあり方もですが、選ぶ受講者も厳しい目を持って検討できるといいですね。
講座選びを失敗したら、ムダに大金や時間を使うことになりかねないので・・・ご注意を!