日本語学校(告示校)で働いていると、色々な学生が来ますよね。
他の環境でももちろん色々な学生がいますが、今回は告示校に絞って話を進めたいと思っています。

日本語学校に来る留学生は?

国によって大学卒業してから日本に来る人が多い国もあれば、高校卒業してすぐに日本に来る人が多い国もあります。
当たり前ですが、個人差も多々あるので「こんな学生がいます!」と一言で言えるほど簡単なことではありませんよね。

ただ「留学生」なので、在留資格は「留学」で、ビザも「留学」となります。
これは告示校の場合は全員そうなります。

留学目的

同じ告示校という枠組みの中でもカラーがあるので、留学目的が勉強一色の学生が多く集まる学校もあるでしょう。
ただ、私が経験してきた学校は「親から離れるため」「稼ぎたいから」というように勉強は二の次の学生も多くいました。
時代ですからね。それ自体は悪くないとしか言いようがない気もします。(もちろん、ルールを守っているという前提で)
正直な話、日本を留学先として勉強したくてしたくて仕方がないという人が多いというのは幻想でしょう。
なんというか、もっと黒いというか、どうしようもなくて日本を選らんでいる人だっているというのが「留学」の現実です。

日本人が「留学」する場合は、多くの人が「英語ができるようになりたい」「海外で生活したい」など、基本的には前向きな理由で、お金を稼ぐために行くとか、身の危険を感じて逃げる手段として使うということはほとんどないと思います。
留学するということはむしろお金を使うことですし、日本人にとっては人生のオプション的な感じで余裕のある人が行くもののようになっているのではないかと思います。

メンタルヘルス問題

留学経験者なら想像できるかと思いますし、実際に経験した人も多いかもしれませんが、どんなに前向きに夢焦がれていた留学でも慣れない環境に戸惑ったり、ホームシックになったりするなど精神的に波がありますよね。

ホームシックであれば時間と共に慣れて、気にならなくなるものですが、それがきっかけとなって精神的にしんどくなったり、心の悲鳴に繋がったりすることがあります。

日本に来ている留学生も当然同じで、理由や原因はさておき「精神的に辛い思いをしている学生が思いのほかたくさんいる」ということです。
国ですでに精神的な病気を指摘されている人もいます。
そうではなく(もしくは知らずに)、日本に来てから精神的なバランスが崩れてしまった人もいます。
海外での生活はホームシックになることもあるので、今まで精神的なことに関する心配事が一切なかった人にでも起こり得ます。

最近は日本の若者にも精神的な問題が増えている(表面化している)と言われていますが、海外でも同じです。
なんせ、人間なので。

さて、先に書いたように、精神的にきつい留学生が日本に現実にいるわけですが、誰が対応しているのでしょうか。
現状、日本語学校にはカウンセラーはいません。
ほとんどの学校では、専任講師・非常勤講師・事務が働いている職員です。

日本語学校の教師陣は「小中高の教員免許」とは違う資格を取得して働いています。
日本語教育の勉学的内容はモーラしているので、授業を運営する上で内容を構成することはできます。
ただ、クラス運営のやり方のようなものは「日本語教師資格」の内容に含まれていません。
ましてやメンタルヘルスなどは研修もありません。
「日本語」を言語の一つとして捉えて、国語ではなく外国語として教えるスキル勉強できますが、それ以外のことは資格の中には含まれていませんし、極論を言ってしまえば日本語教師の仕事にさえ含まれていないのが現状です。

ただ、どうでしょう?
もし自分が担任をしているクラスの中に精神的に不安定な学生がいるとして、その学生が不安を訴えてきたら「それは私の仕事ではないから、専門の病院へ行って。私はその話は聞きません。」と断固として突っぱねることができますか?
授業を運営していく中で考慮に入れないで運営していくことができますか。
現実的には、精神疾患の有無は学生サポートに関わってきます。
時には一緒に病院へ行くかもしれませんし、そういう特性があると理解した上で接する必要があるでしょう。
特別扱いをしよう、という意味ではなく、しんどいと思っている相手を苦しめないように対応するスキルが必要ではないかという話です。

日本語教師に精神的なサポートができるのか

では、今までの現状を踏まえて、日本語教師は精神的に疾患のある学生のサポートが適切にできるのでしょうか。
私は正直な話自信はありません。
「苦しめないように」という前提は理解できますが、自分には今のところ経験ない精神的な問題(鬱など治療が必要なケースを含む)場合、良かれと思っていった言葉が相手を苦しめるケースもあります。
そう考えると、適切な対応や望ましい対応というわれるものがどういうものなのか自信を持って対応することはかなり難しいです。

日本語教師たるもの色々な学生に対応するために心理学も勉強して「心理カウンセラー」の資格も必要だ!と思いますか?
私はNOです。
やりたくない、勉強したくない、という意味で拒否しているのではなく、専門の人がいるのであれば専門の人に任せたいと思っています。
日本語学校に常駐するのは現実的ではないので、曜日指定で来てもらうというのがいいのかなと個人的には思いますが、専門外の人が付け焼き刃の知識で対応したり、なんでも屋さんになるべくスキルを増やしたりすることを必須とするのではなく、外部委託分野として専門性の高い人に協力してもらう。
そうすれば、その人が学校外という程よい距離感が生まれるので学生にとっても「先生という利害関係のない人」としてメリットになります。

現在、私が勤務している学校は約30%の学生がなんらかのサポートが必要です。
(この学校は、専門学校なので日本人もいますが、日本人にも30%、外国人留学生にも30%ほどの比率でサポートが必要な学生が在籍しています)
学習障害であったり、何らかの障害者手帳を持っていたり、精神疾患で薬を飲んでいる学生がいたりします。
コロナ禍において、状況が悪化している学生もいます。
学校としてできるサポートはしていくように努力していますが、専門家には敵わないのです。
※日本語学校は待機が続いているので出勤できていません。待機中の日本語学校は心理サポートのようなことは皆無です。例に出した専門学校は心理カウンセラーが在籍しています。

まとめ

日本人、外国人問わず、精神的にしんどいことはあります。
これからの日本語学校には「精神的サポートの充実」も学校運営の中で必要になっているのではないかと考えます。
特に、教員と学生という関係は利害関係を感じて正直に話をしたがらない場合や、先生の専門外ゆえのスキル不足があります。
コロナが落ち着いた時に日本は留学先、就職先の国として選んでもらえるのか、議論がありますが、精神的なサポートもないようでは総じて「苦しい国」になってしまわないか心配です。

日本語教師がなんでも屋さんにならず、そして専門家に正しく頼るシステム構築が必要なタイミングに来ているように感じます。