現在、専門学校でも授業を担当しています。
専門学校は「留学生しかいない」専門学校ではなく、日本人学生が進学先として選択する学校なので、ネイティブが勉強している中に留学生が混ざっている状態です。
私が勤務している学校は、JLPTを確実に合格してほしいということと、最終目標は国家試験合格があることから、週に1回だけ日本語の授業があります。
そこで見えた「日本語学校卒業生」の苦労の一つはパソコンです。
最近、日本の義務教育でもICT導入が注目されていますが、留学生にもICT教育は必要だぞ!と声を大にして言いたいと思います!!
日本語学校の授業内容
まず、現状の日本語学校の授業に関してですが、告示校・告示校以外に複数勤務したことがありますが、「パソコンの授業」として時間がとられているところは一つもありませんでした。
現在進行形で勤務している日本語学校も同じです。
どうしているのかというと、個々の能力に任せる。という状態です。
確かに「日本語学校」なので、日本語能力を伸ばすことが第一目標だということでしょう。
決して間違っているとは思いませんが…
日本での進学、就職、生活にパソコンって使わないんでしょうかね?
日本語学校の授業時間を考慮すると、他のことに時間を割くのは難しいですが、現状を考えると「日本語学校は進学や就職の前段階として行くところ」と認識している人もいるくらいで、日本語だけをしてくれればいいと思われているわけではありませんよね。
私は日本語学校の授業で「発表」の機会を設けることが多いです。
発表形式をPPTにするか、紙芝居のようにするか、ほかの方法にするかは個人の自由にしていますが、できる人は積極的にPCやスマホで準備していいと伝えています。
個々のパソコン能力は?
そもそも、PCが使えなくて困るのか、学生はパソコンが使えないのか…
もちろん使える学生もいます。
自分のパソコンを持ってきている学生もいます。
一方で、びっくりするくらい使えない学生もいます。
この点は、日本人の学生も同じですが、完全に人によってです。
ただ、気を付けたいことは「ローマ字入力がわからない」「ソフトが日本語表示でよくわからない」可能性が含まれることです。
今まで見てきた学生の中には、自分のパソコンだとサクサク作業していて全く手伝うこともなかったのに、学校のパソコンだと全然作業が進まない学生がいました。
不思議に思って話しかけてみると、理由は2つあって①個人のPCはMacを使用していたが、学校のはWindowsでちょっと違うところがよくわからない、②ソフトの表示が日本語で自分がやりたいことがどれなのかみつけられない(例、Word使用で表の編集をしたいが、表の挿入や幅の変更などが見つからない)ということでした。
確かに…「わからないから読んで確認しよう」というのは大変なのかもしれません。
ということで、パソコンで入力するだけでも苦労する学生もいます。
特にパソコンが得意ではない学生は、難易度がぐっと上がってしまうのです。
でも、進学・就職先では、「書類の入力はパソコン」が当たり前だったりもするので、苦労するんですね。
*学校の場合、最近の学生は日本人だからといってローマ字ができるわけではなかったり、スマホで事足りるためパソコンはあまり使わないと言っていたりして、日本人だから/留学生だからという理由でパソコン能力に差があるわけではありません。基本的には単純に使用しているかどうかの差だと考えられます。
留学生がパソコンを使用する場面は?
日本語学校の授業では「必須」ではありません。
ICTが進んでいる学校は、使用する機会もあるかもしれませんが、現実的にはそのような学校が多いわけではありませんし、在籍学生分のパソコンやタブレットを完備できない学校が多いというのが現状です。
そのため、日本語学校の授業を受けているというだけでは、パソコンスキルがなくて困る授業はないと言っても過言ではないと思います。
もちろん学校によって、「うちの学校では、学生にパソコン使わせている!」というところもあるかもしれませんので、必要な方は就職前に確認されるといいかと思います。
じゃあ、いつ使うのか。
まず、可能性があるのは、進学先のオープンキャンパス関連の申し込みでしょうか。
ただし、今までの学校では教員を経由して申し込みをしていることがほとんどで、学生が直接申し込みをしていることは少なかったです。
次に、JLPTの申し込みを個人でする場合でしょうか。
とはいえ、この点に関してはスマホがあればできるんですよね。
パソコンである必要はありませんし、実際にパソコンで申し込んでいるという学生はあまり多くないように感じます。
パソコンの活用は日本語学校ではなく、卒業後に本格化します。
例えば、進学した場合、授業で「パソコン(情報)」があることが多いです。
これは授業なので、できなくても練習したらいいだけなので、能力は問題ではありません。
また、課題の作成の際にパソコンでの提出が求められることがあります。
コロナ禍においては、課題の進行そのものがパソコンが前提になっていることもあります。
実習などに行く場合は、記録をパソコンで残す職場もあります。
一方、就職するとなると、いかがでしょうか。
肉体労働をする場合はパソコンよりも体を使うかもしれませんが、全くパソコンを使用しない職場を前提とするのは危険です。
しかし、入社して仕事を覚えるときに、一緒にパソコンも頑張らなければいけないというのは負担です…
少しでもできるようになっていると、本人の負担が減りますよね。
今までの学生のパソコン能力の傾向は?
データではなく、主観なので、カテゴライズすること自体、失礼なのではないか…というのはありますが、あくまで「個人の」「主観による」「傾向」と前置きした上で進めます。
「この国出身者は全くできない」ということはありません。
出身国ではなく、出身地域や学歴による気がします。
どういうことかというと、都会出身者(都会育ち)の学生はパソコン使用の経験があることが多く、基本的なことはできるという学生が多いです。
国によっては、田舎に行くと通信環境が悪くなるところもありますので、そのような影響が考えられます。
また、金銭的なところで言うと、「困っていない」学生にも同じことが言えます。
昨今、日本でも各家庭の経済格差が学力格差につながる、ICT環境の構築に影響があると表面化していますが、どこの国でも同じことが起きているようです。
さらに、大学卒業の後に日本留学をしている学生はできることが多いです。
フォリピンの学生は「大学でプレゼンテーション発表があった」と話している学生が多くいました。
欧米系の学生は、パソコンを好きな種類で選ぶくらいなので…個々の得手不得手はありますが、全体的に困ることなしでした。
進学先の先生が困っていること
パソコンに関して、進学先の先生が困っていることは、能力不足ではありません。
この点に関しては、日本人ができるというわけでもないので全く気にならないのです。
じゃあ、何か。
パソコンで授業するにも引っかかってしまうのは、「漢字能力」なのです。
漢字が読めないと、入力しようにも入力ができません。
かといって、その学生に張り付いているわけにもいきません。
その学生もスキルはあっても、読めないことで入力が進まないので課題が達成できなくなってしまい、評価につながらないケースがあります。
IMEパッドも紹介はしますが、書き順がめちゃくちゃで読み取って貰えないんですよね。
漢字って…本当に大事ですね。
まとめ
日本の義務教育に対するICT環境の問題点も多く、改善が望まれますが…
留学生に対する教育の中でも、パソコンが含まれるようになって欲しいなと願っています。