学校によって、レベルによって、授業中のスマホの使用はどうするのか異なると思いますが・・・
皆さんの学校、担当クラスはいかがでしょうか。
当然、スマホでゲームや動画を見るようなことを自由にしてもいい、という学校はないのではないのではないかと思います。
ですから、ここでいうスマホ使用というのは「スマホを辞書として使用する」ことを意味します。
さて、使用可・不可いずれの場合もあるかと思いますが、どのように指導されていますか?

ちょっとヒントになればと思い、個人的な感情も含めた対応例をご紹介します。

前提

最近は学生がいう「電子辞書」は、スマホを意味していることが多いです。
アプリをダウンロードしている学生もいるし、facebookやgoogleなどでネット検索をしている学生もいます。
ここでひとつ注意が必要なのは、辞書としての信憑性が高いものを使っているとは限らないことです。
とはいえ、私たちが全部に目を通してジャッジすることは不可能です。
そして、どんなに辞書を使っているという事実があっても、見た目はスマホを使っていること。そして、そのスマホの中には辞書以外の多数のアプリがあって、授業時間かどうかは関係なくメッセージが送られてくることです。

個人的な意見ですが、私はいずれのレベルでも授業中に自由にスマホ辞書をしようすることはあまりいい印象ではありません。
簡単に言うと「反対派」ということになるでしょう。
ちなみに、携帯ではなくとも、電子辞書でも授業中に多用するのは、避けてほしいと考えています。
では、辞書使用のメリット・デメリットと併せて、実際の教室で何がおきているのかも踏まえて考えてみましょう!

*既に授業を担当して長い先生は「はいはい、知ってまーす!」ということも多いと思いますし、違う意見をお持ちの方も当然いらっしゃると思います。
新規の先生も「私の学校とはまるで違う・・・」という方もいるかと思います。

辞書のメリット

*あくまでも「辞書」としたいところですが(一般的にみんなが辞書として思い浮かべるかたちのアレ)、媒体は問わず「辞書」というもののメリットとして考えます。スマホのアプリでも電子辞書でも紙の辞書でも・・・すべての辞書ということで考えます!

①すぐに調べることができる

当たり前ですが、語彙を知っていることばだけで説明するのに時間を使うよりも、ささっと調べられる辞書は時間短縮になります。
説明する時間が短縮できるだけではなく、学生が理解するのも早いです。
そりゃ、言われるまでもなくそうですよね。
私たちだって、外国語を学ぶとき、先生に一所懸命説明してもらうのもいいですが、辞書で調べれば一発で対訳の日本語が出てくるので。
そして、この時間短縮というのは、クラスで行っている場合は、他の学生の時間を使わなくて済むというのも含まれます。
全員が「わからない」と言うのであれば、みんなであーだこーだ言いながら確認するのもいいですが、大半の学生がわかっている場合は・・・わかっている学生にとっては手持ちぶさたな時間になりますからね。
この時間に話し始める学生もいるし、勝手に次々と先に進めすぎてしまう学生もいるし・・・
できる限り、クラス全体に対して上手に時間を使うことは大事な授業組み立ての要素ですよね。

②質問に対する学生の心理的負担が減らせる

学生によっては、その場で聞くのが苦手な学生もいます。
特にみんなはわかっているのに自分だけがわからない・・・というとき。
遠慮したり、恥ずかしさがあったり、自分で調べるからいいやとその場での理解はあきらめてしまったり。
その場でわからなくても、後で調べて理解ができる、おくれをとらずについてこられる学生はそんなに気にしなくても大丈夫ですが、結局その先の授業が理解できなかった・・・となってしまっては大変です。
そうなってしまうと、その日の授業が全部理解できないということもありますからね。
学生のモチベーションも下がるし、その上に積み重ねて授業をしていくので落ちこぼれてしまうきっかけにもなるし、救いきれなくて教員も大変です。
つまり、誰にとってもプラスにはなりません(-_-;)
できるだけ、疑問や不明点はつぶして先に進んでいけた方がいいですよね。
100%そうはいきませんが、理想は。
そのため、個人で辞書が使えるというのは心理的負担も、学習言語の難易度も下げることにつながります。

③辞書の機能によっては自分の検索ワードの記録ができる

これは、辞書の機能にもよりますが、過去に検索した語彙が記録されるのであれば、自分だけの単語帳みたいなものが検索するだけでできあがります。
有効活用ができれば、再度確認をするときに「調べた語彙」を優先的に復習したり、その語彙だけをテストしたりと、反復練習も可能になります。
テストを自作するのは骨が折れるし、単語帳も自分で作るのは書き写すときにミスがあるかもしれませんが、機械がしてくれるのであれば作成の際に発生するミスも減らせます。

辞書のデメリット

①記憶に定着しにくい

単語だけで調べるので、使い方までは一緒に確認しないことが多いですし、その場でぱっと見るだけでは「その場限り」になってしまって記憶には残りにくいと思います。
どんな場面で使うのか、例文を確認して文書の一部として覚える、同音異義語や関連語彙などの語彙拡充・・・その確認まではしないことが多いので、紐付けて引っ張り出す情報がないのです。
例えば「姉」これを辞書で引くと「sister」と出ます。その場では「ああ、sisterか」と思いますが、「姉=sister」という語彙を忘れたら、また辞書を引かないと・・・。
でも、「家族です。私より年上です。女です。お母さんじゃありません~」と言いながら家系図でも書けば視覚情報もあるので、図の一部として記憶できるかもしれません。
こんな感じで見たり、聞いたりして脳のいろいろな場所を刺激できると、記憶に残る可能性も上がります♪

②調べないと理解できなくなる

よく「前後から推測する」なんて言いますが、わからないのが出る度に辞書で調べている学生は、そこで止まってしまって予測して理解したり、推測したりする力が弱いように感じます。
単純に飛ばして読むということも難しくなってしまうのです。なんせ、気になっていますから。
単純な文型導入の場合は、そもそも前後の文というものがないこともあるし、そこがわからないと導入文型の理解ができないこともありますが・・・
日本語能力試験の読解ではいかがでしょうか。
当然ですが、試験に辞書の持ち込みはできません。
でも、読解は正確に読み取れなくても問題ありませんし、文章がなんとなく理解できれば必要なところは十分に理解できる場合もあります。
そうでなかったとしても、読み進める能力はつきます。
わからないから止まってしまう、というのでは、JLPTもですが、学校の試験でも困ります。
あえて、辞書を使わないで取り組むということも必要です。

③結局、全部わからなくなる

どういうことなのかと言うと、辞書で調べているときは辞書に集中しています。
その間も授業は進み、「〇〇ページを見てください」「〇〇をしましょう」など、簡単な指示が飛びます。
でも、辞書に集中しているので、耳から入る情報は残念ながらそのまま反対の耳から抜けていきます。
母語だったら、問題なく対応ができる学生でも、外国語学習は大変なので、「ながら」で複数のことを同時に対応するのは難しいです。
学生の能力が追いついていないのではなく、誰でもそうなります。
あなたも外国語を勉強しているとき、そんなことはありませんでしたか?いつの間にか、自分以外の学生が違うページを見ていた・・・なんてこと。

④辞書以外に手を全く出さないということは難しい

これは、特にスマホとなりますが、「ちょっと調べたときにfacebookも見ちゃおうかな」「あ、友達からラインが来た」「おおお!今日は試験結果の発表日だ」「ああ、少しくらいインスタグラム見てもいいよね」「つまらないから動画を見ちゃおう」「ゲーム・・・この時間にログインすると特典があるんだよね」などなど・・・
誘惑だらけ。
そもそもFacebookで調べたりしていると、余計な情報が入りすぎるんですよね。
通知を完全に切っている学生はほとんどいませんし、返信はしなくてもメッセージの通知くらいは見るという人だっていますよね。
だって、視界に入っちゃうもんだから。
学生が悪いとだけ言うつもりはありませんが、単純に難しいんですよ!
視界に入ったものを無視し、他のものにも一切手を出さずに授業を受けるというのは(-_-;)
心当たりがある人もいますよね?学生時代は自分も携帯いじっていたな・・・と思う人。
少なくとも私は授業中に隠れて携帯触っていました。
手紙回しをしていたこともありました。
今は、こんなこと言っていますが、偉そうなことを言えるようなお真面目ガリ勉学生だったわけではありません。お恥ずかしい・・・

基本的には授業内で辞書を使わせずに授業をしたい!

「辞書使用禁止」を徹底しましょう。

チーム担当の場合は複数の先生が授業を持ちますが、誰が教えるときもこのルールを教員側も守りましょう。
誰かだけOK!とすると、学生は辞書を使います。
人を見て選ぶかもしれませんが、ダメだと分かっていても隠れて使ったりします。
そして、「なんだ、禁止って言っているだけで使っても大丈夫なんか」と思われます。

また、初級の一番最初のときから辞書は使わないようにしましょう。
教員も語彙コントロールをして、既習文型・既習語彙だけで授業をすれば、基本的に辞書が必要な場面はありません。
進んでいくと知らない単語も出てくると思いますが、イラストや既習内容での説明をすれば、学生のインプットもアウトプットも機会を増やすことができます。
言語は使えてなんぼ。教室で辞書を眺めて、口が動かないような時間が増えるのはもったいないです。
また、いざというときは知っていつ単語でも何とか発してその場を切り抜けます。
そういう力もコミュニケーションです。

一方で「このクラス(このタスク)では辞書を使わせようかな」と思うのであれば、時間を区切ってメリハリをつけるのが大前提です。
いつでも好きなときに個々での使用を認めるのではなく、「〇〇ページを見てください。丁寧に読まなくていいです。読む前にわからないことばを調べましょう。時間は〇分です。」のように、調べる範囲と辞書使用可能時間を示して、タイマーでもセットして、時間を区切りましょう。
もちろん、時間が終わったら辞書は片付けさせて、いつまでも手元に置かせないようにします。

スマホはダメ、電子辞書はいい、と物で線引きをしない

私たちは、スマホを電子辞書と呼ぶことはないと思いますが、彼らはそう呼ぶのです。
「あれだって機械なんだから、スマホと変わらない」と。
実際、機械という意味では変わらないのかもしれません。
なので、辞書がダメなのであれば、紙だろうが、電子辞書だろうが、スマホだろうが、全部ダメだと一貫して「辞書というもの」をダメにしないと納得してもらえません。
*紙、電子辞書のみ許可するという選択もありますが、言語によっては辞書が手に入りにくかったり、金銭的に電子辞書は買えなかったり、学生によって事情があることは理解してあげたいところです。

授業の開始・終了はあいさつをする

これは・・・皆さんの学校はどうなんでしょうか。
私は今回初めてあいさつをしない学校にあたって、軽くカルチャーショックです。
礼儀ということもありますが、それを横に置いても・・・
始めと終わりのあいさつはお互いに授業時間と休み時間をわける意識をするためには、やった方がいいと思うのですが。
チャイムも鳴りますが、教員・学生どちらも仕方なく数分遅れて教室に入ることもゼロではありませんし、区切りとしてはあいさつくらいしてもいいのではないでしょうか?

よくある学生の主張

さて、最後に携帯(辞書)使用に関して、学生がよく主張してくること、教員と意見が合わないことを紹介します。
あくまでも一例ですが、あなただったら・・・どう答えますか?
正解はありませんが、押し黙ってしまうことは避けたいですね。

①(スマホを持って)これは辞書です。
②辞書しか使いません。ゲームやメッセージなど他のことでは使っていません。
③みんなの前で聞くのは恥ずかしい。
④調べた方が早いから。
⑤〇〇先生は辞書だけいいと言いました。
⑥〇〇語の辞書は売っていません。
⑦どうしてダメなんですか。

他にもありますが、どう答えますか???
携帯に関する指導は、学生と対立したり、逆ギレのようなことを言われたりすることもあります。
できれば軋轢を生まずに対処したいものですね☺