日本語教師の注目度がおそらく過去最高に達しているのではないかと思う今日この頃。
じゃあ、今日本語教師を目指すことってどうなんだろう・・・
養成講座の情報を見ると「今がチャンス!」が並んでいる。
じゃあ、本当に「今がチャンス」なんだろうか???
あくまでも主観、個人的な感覚をもとに綴ります。また、あくまでも「これから資格を取得するのはどうなのか」という本当にまっさらな人に焦点を当てたいと思います。

現在の日本語教師の資格とは

今現在は、日本語教師の国家資格や公認資格は明確に定められていません。
ただ、日本語学校で働くためには「暫定資格(求められる条件)」があります。
つまり、公的な資格ではないけれど、誰でもいいとは誰も思っていないし、条件に当てはまらない人は日本語教師として勤務できない、というわけです。

具体的には
①大学、あるいは大学院で、日本語教育を専攻・副専攻で学ぶ
②日本語教師養成講座420時間(法務省認定講座)を修了する
③日本語教育能力検定試験(日本国際教育支援教会実施)に合格する

のどれかを満たしていることが求められます。

さらに、②の養成講座修了の人は四年制大学を卒業していることが合わせて求められています。現実は。

多少矛盾にも感じますが、資格はないけど、何もないと日本語教師にはなれないということです。

今から目指す人はどの資格を目指すべきか

まず、あなたが学生(高校生以下)であれば、大学進学をして、日本語教育を主専攻で学ぶべきでしょう。
今は副専攻でも大丈夫ですが、大学で主専攻だったからといって、大学生活の単位が100%日本語ということにはなりません。
他にも一般教養や語学など、他にも取得するべき単位は山ほどありますからね。
何か変化を加えられるときは、大抵、単位数が低いところにメス入れがあります。
大学でいうと、「主専攻の方がいっぱい勉強していていいよね」と思われる可能性が副専攻には隠れていることが否定できないと感じています。

次に、既に別業種で働いている社会人だとしたら、養成講座が現実的ですよね。
では、この選択肢が最良なのか・・・
正直なところ、学歴によってもその答えは変わるかもしれない・・・というのが現状だと思います。
四年制大学という学歴がない人の場合、420時間を修了したことがそのまま安心だと言い切れない可能性があります。
可能であれば、通信制の大学に編入するとか・・・そういうことを含めて検討する必要性がぬぐいきれないのが現状です。
安易に「420時間を修了したら大丈夫」と信じ切ってはいけないのです。
なぜなら、結局、だめだったときに痛い目を見るのは自分だから。

じゃあ、検定試験の合格はどうか・・・
今のところ、これ一本で身が守れそうな雰囲気です。
短大卒でも。
問題は、この試験は年に一回しかないこと、具体的な合格基準が公開されていないことがあげられます。
考えたくはないですが、不合格だった場合、次のチャンスまで日本語教師という道の選択は難しくなる人も現実的にいるということです。
毎年、合格基準の目安なるものは公開されていますが(公開というか、熱心に分析した人の情報が出てきます)、結局のところは公式情報ではありません。
合格基準が操作されるということは全く疑っていませんが、検定対策講座担当の先生など、合格してもなお毎年受験している人もいるので、気持ちが晴れないと感じている受験生が毎年いるのも事実です。
また、きつい言い方になりますが、「検定合格のみ」で、現場の経験もなく、420時間での実習経験も一切ない先生が、教員としてやっていけるほど甘い仕事ではありません。
検定はあくまでも知識を測るもの。
知識の裏付けは重要ですが、今まで個人にあった常識や、伝わるだろうという目測が全く通用しない外国人相手ですから、現場で求められるのは知識だけではなく「経験」ということも忘れてはいけません。
検定合格のみで現場を目指す人は、最初の勤務先に研修制度がきちんとあるのか、その研修が機能しているのかしっかり見定める必要があります。
お互いのために!!!

ということで、四年制大学の学歴があれば養成講座、もしくは検定合格を目指す。
四年制大学の学歴がない場合は、編入や通信含め、大学卒業の学歴取得を含めて検討する必要性を理解した上で、養成講座・検定合格・大学を吟味する。

セカンドキャリアなど、シニア世代は・・・と思いますよね。
正直、シニア世代が大学に入り直して、というのは非現実的だと感じる人も多いのではないでしょうか。
もちろん、金銭的にも体力的にも余裕あります!という人は「ぜひ!!!」と思いますけど。
この方々は、養成講座が一番いいのではないかというのが率直な意見です。
養成講座は先生に直接、その場で質問・確認できますし、実際に留学生とのふれあいが含まれている学校もたくさんあるので、現実として体験してみることで、見えてくるものもあるでしょう。

全体に言えることですが、日本語教育界・資格認定については現在進行形で変化しています。
新日本語教師資格、公認資格、国家資格・・・様々な言い方がされていますが、近い将来「プロの日本語教師」として確立される動きです。
正直、決定されるまでは具体的に安心策はないのです。
残念ですが、今はそんな感じの何とも言いがたい状況なのです。
ただ、一つはっきりとさせておくべきなのは、地域コミュニティで行っているようなボランティアは必ずしも日本語教師資格がないとできないというわけではないのです。
告示校で教える場合、プライベートの日本語教師をする場合(会社所属、個人事業など)、完全ボランティアで収入を得ない場合、海外の日本語学校で教える場合、海外の大学で教えたい場合・・・どのような環境で日本語を教えるのかによって、どのくらい厳しく日本語教員資格が求められるのか変わります。
日本語教員資格より語学力が求められる場合もあります。
どのような環境で教鞭をとりたいのか、きちんと考えてどの資格に焦点を合わせるのか考える必要がありますね。

余談ですが、420時間養成講座にだけ頼る点で何が危険なのかというと、その養成講座が将来的に認められ続けるのか保証がないことです。
どういうことなのかというと、10年、20年前にも「日本語教育」の講座はあったわけですよね。
その当時は「認定講座」として開講していたとしても、制度改変の際に既に講座を閉じてしまっていたり、内容がそぐわなかったりすると、「新しい基準に則していない」という理由で420時間養成講座の修了者と認められなくなります。
現在、既にこれは起こっていて、どんなに経験があっても「無資格者」にされてしまう人がいるのです。
また、もし養成講座の企業が倒産でもしたら、証明書の発行も頼めなくなります。
「そんなこと気にしすぎたら、何もできないやん!!!」というお声が聞こえてきそうです・・・
あくまでも、何か一本に頼りすぎないこと、養成講座選択は何でもいいと思わないことを注意喚起しておきたいと思います。

養成講座がうそを言っているとは言いませんが「今がチャンス!」「簡単に国家資格に移行できます」「これが修了したら日本語教師!」とキャッチーなフレーズを信じすぎず、自分の状況・学歴・職歴・希望勤務先など、よく研究して変わりゆく波に乗りましょう。

結果、今、日本語教師に転職するのはどうなのか

だめとは言いませんが、現状に不満がないのだとしたら、急がないと行けない理由がないのであれば、業界の様子を1年見てもいいのかと思います。
なぜ1年なのかというと、ここ1年で変革案がまとまり、発表されることは確実だと既に言われているので、それを確認してからでも遅くはないと思うからです。
きわきわで「大丈夫だろう」という話に乗った結果、大丈夫ではなかったとなった場合、資格の取り直しなど余計にお金がかかります。

また、2020年度の日本語教育界はおいしい転職先とは言い切れないのです。

①入管法の改変
 →特定技能ビザが作られ、主に東南アジアの学生は「働けるなら、学生ビザでは来ない」という動きもあります。
日本語学校として、学生ビザの学生だけが対象なのか、特定技能でも受け入れができるのか・・・学校の学生募集にも影響が出ています。

②学生ビザ取得の厳しさ
 →経費支弁者の信憑性、資料の信憑性など、理由は様々ですが、以前よりもビザ発行が厳しくなっています。
基準は変わらないという話も耳にしますが、現実的にビザが出ていない現状があります。
学生が来ないと、日本語学校はクラスの開講ができない、クラスが著しく少なくなるので、採用できる日本語教師もそんなに増えません。
当たり前ですが。

③日本語教師資格の改変
 →どう変わるのかによっては、現在の教員が全員無条件で守られるのかも分かりません。
転職予定者の準備してきたこと(養成講座受講など)が100%保証されるとも限りません。
確定していないことについて「安心」と言い切ることは難しいのです。

④新型コロナウイルスの対応
 →日本入国のための準備ができない人もいるし(自宅待機のため)、国として日本を感染症危険区域として出入国に神経を尖らせている国もあります。
これに関しては、ここ数日で状況が一変したことですが・・・
3.11の地震後も日本語教育界は苦しい状況に立たされました。
もう少し様子を見ないと、4月から日本語学校が通常通り授業を開始できるのか誰にも分からないのです。
影響が出た場合、4月だけではなく、しばらくは留学生の入国・クラス数には影響が出るでしょう。



日本語教師を目指し、いつか一緒に働ける人が増えることは大歓迎!
本当に楽しみなことです。
ただ、社会の変革で切り捨てられるような日本語教師が生まれないことを願います。
何事も最終的には「自己責任」とされてしまいますから・・・
そのため、日本語教師を目指す人には、安心して進学・転職ができる情報が早く通達されればいいなと思います☺